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また待っている人のいない話を書いてしまいました、アサマですこんにちは。

最近ゲームプレイしてないのですが、6月後半から7月にかけて萌え滾ったドキサバの話をぽつぽつと。
とりあえず、第一弾は日吉編です。
ホントはサイトに学プリ・ドキサバをメインとした他ジャンル部屋を作ろうと思ったのですが、想像以上にページを手直ししなくてはならず(特にフレームを使ってない部屋)こりゃちょっと大変だ、と思って簡易なブログでのアップに方向転換しました。そのうちページ作ったら移します…。サイトと同様、

ネタばれあり・糖度ナシ・エロもなし

ですので、覗いて下さる方はそれを踏まえて閲覧して下さい。

*********************************

Lunatic


「日吉くん!」

真夏の夜の月下。憩いの場。
日吉若(ひよしわかし)は自分の名前を呼ばれてそちらに視線を投げた。
暗がりの中、草を踏み分けて目の前に現れたのは、小日向つぐみだ。
「ん、何だ、お前か」
そんなふうに素っ気なく言われるのを気にする様子もなく、彼女は歩み寄って日吉の隣に並んだ。

中学テニス界の有望な選手を集めた選抜強化合宿。夏の暑い時期を選んで行われることになったその取り組みのため、選抜メンバーが一堂に会したのはつい数日前のことだ。だが、開催地へ向かう船上で嵐に見舞われてしまい、選手たちの大半は、合宿の行われる予定であったこの島へと救命ボートによってからがら漂着した。その中に偶然紛れていたのが、彼らと同世代であるこの小日向つぐみと辻本彩夏で、つぐみは日吉たちが乗っていた船の船長の娘だった。そして、遭難から数日経った今もまだ、日吉たちを引率する各校顧問たちの行方が杳として知れないのと同様に、つぐみの父の安否もまた不明である。

彼女は先ほどまでの日吉の視線を辿って言う。
「もしかしてお月様見てたの?」
訊かれて、日吉は頷く。
「ああ、そうだ」
人工の明かりが殆どないここでは、ただでさえ可視に労のないその衛星は、欠けた部分の多い今でも、よりくっきりと輝いてその存在を主張しているように見える。ーー美しい。
「もうちょっとで半月になるね」
彼女がぽつりとつぶやく。
月の光に照らされた、ほっそりとした頼りなげな彼女の佇まいに、日吉はざわざわと嫌な具合にさざめき出す自分の感情を、無理やりねじ伏せるようにして抑え込む。

(よせ、うるさいぞ。少し大人しくしてろ)

今はまだこうして彼女と話をしていたい。言葉をかわしていたい。なんでもない時間を共有していたい。

だが。

ダークサイドの感情は容易に良識を凌駕する。

・・・・・・夜がいけない。
この、暗闇が。
月の中途半端な光量がいけないのだ。冴え冴えとしたそれは、まるで闇に力を貸すかのように、目の前の対象物をより蠱惑的に見せているように思えた。
太陽が放つ健やかさであれば、こんな感情なんて、その熱量で一瞬にして焼き払い、消し尽くしてくれるに違いないのにーー。
闇に馴染む光に浸食されるようにして、日吉は彼女に尋ねる。

「お前は月を見るのが好きか?」
「うん、好きだと思う」
「満月は?」
「お月見にいいよね」
あくまで暢気な彼女に、日吉は唇の端をわずかに上げてから、話し出す。
「知ってるか? ルナティックと言うんだが、それは月、つまりルナから来ている」
「え?」
「月は狂気の源なんだよ。満月の日には殺人事件が多発するという説もある」
日吉の語りに、彼女が少し息を飲んだのが聞こえてくる。
「う、うん」
何を言い出すんだろう、とでも言いたげな、ほんの少し不安を宿した瞳が自分に向けられるのを見て、日吉は内心でほくそ笑む。

(そうだ、それでいい)

そして、続けた。
「古来から言われている狼男の伝説でも、変身するのは満月だ。俺も実はな・・・・・・月を見ていると身体の奥から・・・・・・」
途中で言葉を切り、じっと手のひらを見る。
日頃の鍛錬によって鍛え上げられたそれを、軽く曲げ伸ばして見せる。
そして。
「えっ!? ひ、日吉くん?」
彼女の白い喉元に手を伸ばした。そっと、音もなく。
指先を、触れるか触れないかぎりぎりのところまで。
唐突な接近に、よろり、と彼女がよろけて、背後の木に背をつく。
日吉も追うようにして、その木の幹へと手をついた。獲物を逃がさず、追いつめるようにして。
それからーー至近距離まで顔を近づけて、月を背に、嘲笑(わら)った。
「この・・・・・・どす黒い衝動が・・・・・・こみ上げてくるんだよ」
その笑みを見た瞬間、はっきりと、彼女の表情におびえの色が走る。
「ち、ちょっと・・・・・・日吉くん!」
小柄な身をさらに縮め、小さな両手のひらを握りしめて口元へと寄せる。あからさまな防御を表すポーズに、日吉はひょいと肩をすくめてみせた。
「なんて、そんな訳ないだろ」
軽い口調。
身軽に後ろへと身体を引いて、あえてやや長めに間合いをとる。
そんな日吉の様子に、彼女はあからさまにほっとした様子を見せた。
「・・・・・・あ、やっぱり」
日吉はいつもの調子に戻って話を進めた。
「けど、月にまつわるミステリーってのは本当にあるんだぜ」

そして、月の夜の逸話、そのいくつかの蘊蓄を披露してやると、彼女はいつものように日吉の話に興味深そうに聞き入る。
そうやって、当たり障りのない会話をほとんど頭を使わないでするのぐらいは、日吉にとってお手のものだ。
そして、情報を処理するプロセッサの実働部分の殆どは、別のことを考えている。

しかし。

「・・・・・・日吉くん?」
「!」

いつの間にか、思考に没頭し過ぎてしまっていたようだ。不審げに声をかけられて、ビクリとする。

「なんでもない。そろそろ行けよ。辻本が心配するだろ」
「・・・・・・うん、そうだね。おやすみ、日吉くん」
「ああ、おやすみ」
「また明日ね?」
「・・・・・・ああ。また明日だ」

最後、振り返り間際に見せられた笑顔のせいで、彼女が寝起きしている管理事務所のロッジまで送るべきか、と思ったものの、その場は諦めることにした。何しろ狼男の話をしたばかりだし、つぐみに比べて行動的な彩夏がロッジに戻っているとは限らない。

(送り狼、なんてもんになったら洒落にならないからな)

だから、先ほどと同じようにまた独り月を見上げる。
夏の暑さの中にいるせいか、そこから届く光もほんのわずかだが熱を帯びている気がした。もちろん、錯覚だ。

(どうかしてるな。本当に)

『日吉くん』

そう名前を呼ばれただけで、自分の心は落ち着きをなくす。
姿を認めなくても、声だけで、もう。
日吉が初めてその声を聞いた時からまだほんの数日しか経っていなかったが、それが誰のものかを聞き分けるのは造作もない。ここが無人島で、自分の周りに居る人間がその声の持ち主以外殆ど男だという特殊な条件がなかったとしても、今の日吉にはそれが十分に可能だ。

頼るべき大人のいない中、食料も、燃料も、命をつなぐのに必須である飲み水さえも自分たちで調達せねばならないサバイバル生活。それが始まった当初、父を心配してであろう、誰よりも暗い顔をしている彼女を、辛気くさいと他人事のように思っていたのが嘘のように、今の日吉は彼女のことを気にかけている。そしてそんな気持ちを煽るかのように、彼女は度々日吉の元にやって来るのだ。無邪気に、そして無防備に。
彼女自身が日吉をどう思っているのかはわからないが、明かりも人気(ひとけ)もないこんな暗闇で、迷うことなく側に寄ってくるのを見せつけられると、日吉の内心は複雑だ。

それは信頼か。
それとも、舐められているのか。

どちらにしてもイライラさせられる。自分ばかりがこんな思いをするのはフェアじゃない。納得いかない。
そう思うと、質の悪い冗談でからかってみたくなる。心を、乱してやりたくなるーー。

それでいて、誰よりも優しくしてやりたい、甘やかしてやりたいと思う気持ちも同じようにあるのだから、我ながら屈折している。

そんな自分に舌打ちしたいような気分になると、先刻、彼女に月の話をしていた時に考えていたことを再び思い出した。

(衝動、か。殺人なんて物騒なもんじゃないけど、確かにあるんだぜ? この、俺の中に)

(もしそれが本当だとしたら、おまえはどうする? もしも俺がそいつに従ったらーー)

心の裡に巣くう衝動のままに奪うように触れたとしたら。
傷つくだろうか。
泣いて誰かに助けを求めるか?

その場合、今ここにいる連中で敵になりそうなのは誰だろうか、と日吉は考えていた。計算していた、と言ってもいい。

海側であれば、比嘉中の連中は相当な琉球古武術の使い手だろうし(是非一度手合わせしてみたいものだ)、山吹の亜久津もかなり場慣れしている。
どの連中も鍛えてはいるが、真に武闘派なのはそのぐらいだろうか。だが、彼らが本当の意味で日吉の敵になることはない。テニス以外のことでは。あちらにはあちらの事情がある。きっと。
だとしたら。
現実的可能性としてこちら側にいる一番の強敵は、立海の真田だろうか。
もっとも。
山側の連中はみな、彼女に多かれ少なかれ好意を抱いているはずだ。
父親の身を案じながらも、今できることを、と華奢で弱々しい体をフルに使って健気に働いているのだけでも同情を引くというのに、その上気だても見た目も料理の腕までも悪くない、ときている。こんな特異な状況では、そんな彼女に関心を抱かない方が男としてどうかしているだろう。狼の中の羊、とはよく言ったものだ。
彼女が見学しているだけで練習の効率が上がる、と立海の柳も青学の乾も分析していた。男の悲しい性というやつだ。
もしここにいる連中が束になってかかってきたとして、どう立ち回れば必ず勝つことができるだろうかーー?

彼女に強く名前を呼ばれて我に返るまで、そんなことを、真剣に思案していた。

(・・・・・・やれやれだ。なんでこの俺が)

テニス以外のことで、こんなにも。
よりにもよって他人、しかも女のことなんかで。
何故。どうして。

その疑問の答え、正解は、既に自明のように思われた。
だが、まだ、認めたくない。
だから日吉は、自分の外側にその理由を探した。
そしてそれは、すぐに見つかる。自分の、遙か頭上に。

たった数日で、こんなにも彼女にいれ込む羽目になったのも。
その彼女を手に入れるためなら、ここにいる20人を越える奴らすべてを相手にしてもいいと思ってしまうのも。
それも、これもみんな。

(この月の魔力のせい、かもな)


今はまだ、そう思いたかった。




***********************************

ゲーム中の日吉の夜イベントをまるっと使っただけのお話。
このイベントの最中の日吉がこんなこと考えたたら私得だな! と思って書きました。
日吉は(学プリとドキサバでは)Sだからな!
これが中学生? という突っ込みは今更なしの方向でお願いしますw
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