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突発的に、先日の記事に置いた「その瞳、唇よりも」の続きを書いてしまいました。
それと言うのも、このSSに某M様から感想をいただいたのですが、そこに書かれていた嵐さんの作中の心情と言うか台詞に萌え滾ってしまったからです。

…ホントはコメントのお返事での4、5行の妄想文になるはずが、うっかり「その瞳~」と同様2000文字を越えてしまうとは…。
作品としては一応あれで完結しているので、完全におまけです。こちらはサイトに移す予定は今のところありません。はっきり言って書き殴りクオリティです。まあ、ここを覗いて下さった方で、気の向いた方に見ていただけたらな~と思います。

M様、お返事をする前に勝手をしてしまってすみません<(_ _)>

タイトル(?)は、諺、「武士は喰わねど高楊枝」からきてます。私が書く嵐さん話のタイトルって、嵐さんの名前が入ったものが多いな…タイトルセンスなくてすみませんです。

嵐さんとバンビが臨海公園地区のショッピングモールにあるフードコートで食事を終えて建物から出たところから話が始まります。続きものなので、「その瞳~」を読んでないと意味不明です。

******************************

昼食を終えて、二人はフードコートをあとにした。
そのままショッピングモールの入っているビルを出ると、すぐさま冬の冷たい空気に晒される。建物の中にいた時の余韻が残ってるせいもあり、新陳代謝のいい不二山には心地よいくらいの冷気だったが、隣の彼女がコートに包まれた肩を小さくすぼめたのに気付く。だから不二山は、着ていたダウンジャケットの前に手をかけ、まずは肩からそれを下ろした。
すると、不二山が何をしようとしているのか察したのであろう、彼女はぎょっとしてダウンの前身頃を掴んでいる不二山の両手を押さえる。その手が、やはり冷たい。
「離せ」
「だめだよ。ちゃんと着てて」
「俺、寒くねぇもん。おまえは寒ぃんだろ。いいからこれ着ろ」
彼女は小柄なので、コートの上からでも十分不二山のそれを羽織ることができるだろう。
だが、彼女は首を縦には振らなかった。
「ちょっと歩けばあったまるから大丈夫だよ」
「なら、あったまるまで着てろ」
すると彼女は、頑として引かない不二山から手を離し、少し考えるようなそぶりを見せてから、言った。
「もしどうしてもそれ脱ぐって言うなら、さっき買ったミニスカート、一人の時にも穿きます」
「!」
不二山は、思わず、彼女が腕に提げているショップの紙袋の中のひとつに目をやる。
その中に入っているスカートは、彼女が一目見て気に入ったものなのだが、試着しているところを見たらあまりにも丈が短かった。しかし同時にあまりにも似合っていたので、協議の結果、二人で一緒に出かける時限定で身につけるという協定が結ばれた。もっとも、冷静に考えれば、いかに恋人同士とは言え、着るものに注文をつけるなどいささか過干渉であるに違いない。逆の立場なら正直御免である。なので、絶対的な拘束力を持つわけではない、あくまで努力義務規定、彼女の方が大きく譲歩してくれているのだと言うことは、不二山も承知しているのだが。
「裏切るんか?」
睨む不二山に、彼女はしかつめらしい顔で頷いてみせる。
「それは貴公の返答次第ぞ。二つに一つ、好きな方を選ばれよ」
「っ…卑怯な…! つーか誰だよそれは」
「いいから、どっち?」
不二山はしぶしぶ脱ぎかけのダウンを羽織り直す。
「着たぞ。だからスカートも禁止」
「ふふっ。……よし」
彼女は満足げに小さく頷く。
やりこめられて、不二山は口を尖らせる。いつもと立場が逆だ、と思った。一本取られた。
そんなふうにして、半ばふてくされる不二山の腕に、彼女がしがみついてくる。
「ありがと。ごめんね、脅すような真似して。これだけで十分あったかいから」
その様子に、不二山は小さく息を吐く。口には出さないが、卑怯だ、とまた思った。思ったが、こくりと頷く。
「……押忍」
そのまま二人は、臨海公園内へと入り、煉瓦道を歩き出す。海からの風は冷たいが、直前のやりとりで十二分に暖まっていた。自分の胸の内をなみなみと満たす酷く甘ったるい感情に、不二山は、なんだかな、と思う。彼女と想いが通じてからと言うもの、自分は随分柔弱になってしまったような気がしないでもない。今なら本当にカップルストローを使えそうな気すらして、不二山はぶるぶる小さく頭を振った。こんなことを考えるなんて、本当にどうかしている。
平常心平常心、と自分に言い聞かせていると、彼女が言った。
「あのね」
「ん? なんだ」
「さっきの夢の話なんだけど……夢の中だけでも同棲生活を味わってみたいなぁ、とか全然思わなかった?」
訊かれて不二山は、短く答える。
「思わねーな」
彼女はため息をついた。
「即答だね……」
「だって夢だぞ。思い通りになんかなんねぇだろうし、第一、夢ん中のおまえより、本物の方がいいに決まってる」
思うまま素直に理由を述べると、彼女はあさっての方を向いた。
「……ふぅん……」
そのわりになんでもなさそうな相槌を打つので、ひょい、とその顔を覗き込むと、はっきり笑顔である。
「なんだ、にやにやして」
「べ、別に? にやにやなんてしてないけど?」
「そうか? ……ま、理由はそんだけじゃねぇけど」
「他にもあるの?」
「ある」
「? なに?」
彼女は興味深そうに瞳を輝かせたが。
「教えねぇ」
不二山はさくっと拒否する。
当然彼女は、不満そうな顔になった。
「えー! 理由があることだけほのめかしといて、それはないんじゃない?」
「おまえ、さっき俺を脅しただろ。だから仕返し」
「えぇ!? それってなんか男らしくないんじゃ…」
「なんとでも言え」
「……ねぇねぇ、謝るから教えて?」
「ヤだ」
「どうしても?」
「どうしても」
「意地悪」
「お互いさまだろ」
「ちぇ」
「口真似でも女が舌打ちなんかすんな」
「じゃあ女らしく泣いちゃうもん」
「いいぞ。けど、俺に泣き落としは通用しねーよ」
「むぅ……」
不二山に本当に教える気がないのだと悟ったようで、彼女は追求を諦めたようだった。
結構根に持つタイプなんだから、とぶつぶつ言っているのが聞こえたが、不二山は知らんぷりを決め込む。そのまま澄ました顔をしていた。
何しろ理由を知られることは、男の沽券に関わるのだ。そう簡単には教えられない。

夢だ、とわかってすぐに目を覚ますように努めた理由は、至極単純だ。

さきほど、一緒に住むなどあり得ないと伝えることですっかりしょげてしまった彼女に、不二山は、色々な意味を込めて、待ってろ、と言った。だが、実のところ。

(……夢だろうがなんだろうが、一度でもそんなん味わったら、こっちが待てなくなっちまう。…多分だけど)

「しない」のを選択すること、イコール「したくない」ではないのだから。

だが、我慢しているのだと悟られてしまっては格好がつかない。
それに。

ぜってぇ教えてやんねー。さっき一本取られちまったからな、と。
不二山は内心こっそり舌を出す。


――やはり、少々根に持つタイプなのかもしれなかった。
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