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メインはサイトのレス用です。たまに他愛無ない日常の事も。
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先日、志波勝己誕生祭09様が終了されました。
お忙しい中素敵企画を立ち上げて下さった主催のめぐさん(改めまして、おめでというございます!)とaikaさんには今年も大変お世話になりました。(あ、間違えた昨年も、だった。今年もお世話になります、だった。正月ボケか)
拙作を掲載してくださってありがとうございました!
(と読んでくださってるカモと思いながら書く)

…しかし、まだだ、まだ終わらんよ! とばかりに、主催様が提供してくださった素敵お題で考え付いた話を昨年末からケータイでちまちま打っており、ようやっと完成しました。


そして出来たと思ったら、なんだこれ、


暗っ…!


よかった…企画様投稿用の話じゃなくて…。
新年早々志波くんが酷い目にあっています。
仕方ないんだ! アサマの魂の七割はネガティブ・ホロウで出来ているから…!(そんなヒトいやだ)
前々から書いていますが、拙宅では管理人に好かれているキャラほど辛い恋を強いられるのです。
Sじゃないんですけどね、私(説得力ゼロ)。


志波勝己誕生祭09様よりお借りしたお題、「しばかつみでアナタと一緒の5題」の「知らない人から電話」の3作目です。


どんな志波くんでも無問題、という方のみ続きをクリックプリーズ!
あ、あとわりと長いです。

知ラナイヒトカラ、電話






「ごちそうさま。……うまかった。サンキュー」
「お粗末様でした」


正月明けてすぐの連休中。
オレは一人暮らしをしてる恋人の部屋で、いつものように満たされた気分で寛いでた。
出してもらった昼飯はこれまたいつもと同じで味も量も上々。言うことなし、だな。
下げられた食事の器と入れ替わりに目の前に置かれたコーヒーカップに口をつけて、一息。
するとテーブルの向かいにいるそいつが、くすりと笑った。
「……なんだ」
オレが聞くと、両手で包むように持った揃いのカップを、律儀にテーブルに置いてから答える。
「勝己くん、眠いんでしょ」
「いや、それほどでもない。まだ」
「ウソ。お昼に満腹になるといつもそうだもん」
鋭い指摘に苦笑いする。
「まあ……少しな」
「『ナスがママ、きゅうりがパパ』」
「?」
「ふふっ。高校時代お昼寝の場所に向かう時に、言ってたよね。そんなこと」
「そうだったか?」
覚えてない。よく。
「そうだよ! 勝己くんの冗談、貴重だったからはっきり覚えてるもん」
「忘れろ、そんなもん」
「いやですー。『狂犬』と併せて語りぐさだもん」
こいつに寄ってきたナンパを追い払うのに使ったその方便には、覚えがあった。
まさかあちこちでふれ回ってるんじゃないだろうな、と気恥ずかしくなって聞いてみる。
「誰と」
すると、そらとぼけた顔から返ってきた答えは。
「え? わたしの中でだけですが、何か?」
「……」
イタズラっぽく微笑んで、さらに追い討ちをかけられる。
「勝己くんてさ、意外とギャグ好きだよね。オヤジ?」
「っ……」
痛いところをつかれて一瞬怯んだ。
が、オレはすぐに態勢を立て直す。
目を細め、ことさらにコワい顔を作って睨み据えつつ、小さく笑ってやった。
「なんだったら今すぐになってやろうか、『狂犬』」
「わ、ウソウソ、冗談です、ごめんなさい!」
慌てて謝る様子に、してやったりと思いながらも、正直少し残念な気持ちになる。


……なりそこねた。


そんなふうにゆっくりと過ごす、大学も部の練習もないたまの休日。
二人だけの空間、かけがえのない時間。
そこに割って入るようにして、突如流行りの曲が室内に流れ出した。
こいつの背後のデスクの上に置かれた、携帯電話用のホルダー。そこに入れられている、白くて薄い携帯電話。いや、無駄とも思えるくらいあれこれ機能がつけられた今となっては、もうただの電話とは呼べないかもな。
誰だろ、と呟きつつ立ち上がってオレに背を向けると、なにがしかの操作をしてすぐに着信のメロディを止めた。それから携帯電話を元に戻して、何事もなかったかのようにまた席につく。
けれどさっきとは打って変わって目の前のその顔が少し不自然に強ばってるように見えて、オレは尋ねた。
「メールか?」
「え? ううん、電話」
「いいのか、出なくて」
「うん。見たことない番号だったから。多分知らない人からだよ」
「そうなのか?」
「ケータイって意外によくあるんだよね、間違い電話。登録になれてると、初めての番号にじかにかける時に間違えやすいのかも。メールもさ、漢字の変換機能に頼りすぎて誤字に気づかなかったり漢字忘れちゃったりするし。便利なのも考えものだよね」
「……そうかもな」
「さて、洗い物しちゃうね!」
言って勢い良く腰を上げて、テーブルの上のカップをふたつ、脇に置いてあったトレイに乗せる。
そしてキッチンで鼻歌なんか歌いながら皿を洗い始める様子に、オレは微かに、だが確かな違和感を感じた。


妙に饒舌だったな……。


それに、かかってきた電話にはちゃんとオレに断りを入れてから出て、今人と居るからと相手に伝えて短く済ませるのが普段のあいつだ。たとえそれが、見知らぬ番号であったとしても。


いつもと違うその態度に、ちりちりとイヤな感覚が胸のどこかを焼き焦がす。
そして水面に広がる油に引火するように燃え広がる。静かに。


警告。
本能が鳴らす警鐘。
勘は悪い方じゃない。残念ながら。
それ以前に、あいつは嘘がヘタだからな。


……多分、アタリだ。


「……」


水仕事に集中しているあいつをちらりと見やってから静かに立ち上がり、ホルダーに立てられた携帯電話を手にとった。付き合い出してからふざけて何度かいじったことがあったから簡単だ。
2つ折りのそれを開くと、素早く操作して着信履歴を呼び出す。



『佐伯くん』



最新着歴、液晶画面に現れたその名前に、愕然とした。



反射的に携帯電話のクリアボタンを押して折りたたみ、すぐにホルダーへと戻す。呆然と立ちすくみそうになる体を叱咤して、元の位置へ。


「…………」


佐伯瑛。
はね学時代の同級生のその名前は。


『おまえの笑顔が見られるならそれでいい』


オレがそう言わざるを得なかった原因。
あいつに想われながら唐突に、忽然と姿を消したヤツ。
もうオレとは勿論、あいつともなんの関わりもないと思っていたはずのその名前。


どうして今更。
なんの用で?


信じられない思いで、キッチンに立つあいつの小さな背中に視線を投げる。


なんで隠した?
オレに気を遣って、か?
……多分、そうだろう。
昔好きだったヤツから電話がかかってきた、なんてしれっと言えるような女じゃない、あいつは。
それに、佐伯の方にしたって、ただ近況を伝えるためだけの電話かもしれないしな。


そう思いたい。
だが。
本当にそれだけなのか?


どんな事情があったか詳しくは知らないが、その後のあいつの様子からして、懐かしいからと簡単に連絡してこられるような最期じゃなかったはずだ。それくらいずっと相談にのってたオレにはわかる。嫌ってほど。


それに。
さっきのがヤツがいなくなってからかかってきた最初の電話だとどうして言い切れるーーー。


そんな疑いが、白いシャツについた染みみたいに厭な鮮やかさで心に浮かび上がる。
それほどに、オレは『親友』をやり過ぎた。
どれだけあいつがヤツに惚れていたのか。それを長く間近で見過ぎたんだ。オレは。
だから、本当は黙ってるつもりだった。抑えても抑えても殺しきれず、暴れて手のつけられなかったおまえへの気持ち。


けれど、ヤツがおまえを置き去りにしたと知った時、とっくに超えてた限界に突き動かされるようにして、オレは。


『おまえを裏切り続けたオレを許してくれ』


夕陽に包まれた浜でそう言ったオレをおまえは受け入れてくれた。
自分も同じ気持ちだったんだと、ほとんど泣きそうな顔で。


嘘でも良かった。その時は。
たとえ身代わりでも。
喪失感からくる錯覚でも。
本物にしてみせると思ってたからな。


……その後。


今まで平穏無事だったのはヤツがもうここに、あいつの周りに現れることがないってわかってたからだ。
そして、ふたりで新しく時間を重ねるにつれて、おまえの気持ちも本物なんだと信じることが出来た。これからずっとふたり、並んで同じ道を歩んでいけるんだと。
ーーそう、ほんの数分前までは。



なのに。



残ってるのか?
まだ、ヤツへの気持ちが?


自分の疑念に、握る拳に力が入る。


もしそうなら、赦せねぇ。絶対に。


おまえのものだったら。
髪一本、吐息のひとつ、視線の一瞥、心のひとかけらだって他の男にはやれない。何ひとつ分かち合うなんてまっぴらごめんだ。全部まるごとオレのものでなけりゃ満足できない。
それが今のオレの本音だ。たとえ浅ましい、小さい男だと蔑まれても。


……そう強く思いながらも。


絡む指の確かさ。
触れる唇の甘さ。
繋がる体温に溺れる快感。
通う想いの絶対安堵を。
一度知ってしまえば後戻りはできない。もう二度と。到底無理な相談だ、そんなことは。


だから。


たとえおまえの中にオレ以外が住んでいたとしても、おまえを手放せはしない。
オレの隣にいてくれるなら誰を想っていても構わない。どこにも行かせない。
オレの手の、目の届く範囲にいてくれ。


そんなふうに湧き起こる正反対の強烈な願い。
もし心ってもんに形があるなら、両端から強く引かれて千切られちまいそうなくらいに。
そして……オレにはこの種の痛みに覚えがあった。
数年たった今もまだ、すぐさま生々しく思い出せるこの感情。



野球を捨てられず。
かと言って自分を赦すこともできず。
自分の裡にある時計を叩き壊すようにして時間を止めて。
毎日を生きながら死んでいる感覚。
周囲から自分だけが取り残され、どうしようもなくズレていく。
踏み込まれたくない、簡単に赦しの言葉を聞きたくもない、ただそれだけじゃなく、置き去りにされる自分をなるべく感じたくなくて他人を遠ざける日常。
野球に焦がれる自分を何度も何度も殺して。
大事なものすべて差し出すことだけが仲間(あいつら)へ贖罪だと思いこんで。
それでも、いつかはマウンドに立てるんじゃないか、すべてを取り戻し、やり直せるんじゃないかって、行き止まりの先を探して、苦しくて……苦しくて。
進むことも戻ることもできずに、動けずにいたあの日々。


そんなふうに暮らしてたあの時期のオレの状態と似てる、気がした。


そう思うと、自分の精神のバランスがいかに危ういかを思い知らされる。
同時に、そんなオレの背中を押してくれたおまえが、どれだけ手放せない存在なのかをも、切実に。



「……どうしたの?」



いつの間にか洗い物を終えて、オレの隣に座り込んでいるおまえにようやく気付く。
固く握り締めて血の毛の引いたオレの手。その上に柔らかく温かな手を重ねて、心配そうにオレをのぞき込んで。
そんなおまえに、オレは意識的に表情を消して応えた。
「悪い。なんでもない。ちょっとぼーっとしちまってた」
「そうなの?」
「……少し、疲れてるのかもな」
「そっか……。練習、きつい?」
「まあ、それなりに」
「休んでていいよ。無理しないで」
「ああ。サンキュー」


オレのごまかしに納得したのか、おまえは少し微笑む。瞳に気遣わしそうな色を残しながら。
そんなおまえを見るとたまらなくなって、とっさに腕を伸ばしてその細い肩を抱き寄せた。


「……勝己くん?」
胸のあたりで響く声。
「なんでもない。少しだけこのままで、いいか」
「うん」
声が震えないように気をつけながら、好きだ、おまえが、と呟くと、背中に小さな手が這う感触とともに、わたしもだよ、と囁く声が聞こえてくる。
「…大丈夫だ、オレは」
「うん。大変かもしれないけど、好きなことだもんね」
「……ああ。だな」
言いながら、回した腕に力をこめる。
強く。
確かめるように、逃がさないように。


こうやって、不安なのをおまえに伝えずに、なんでもないふりをして大丈夫だと口に出していれば。
言霊みたいに。
嘘も口に出して言えば現実に、真実(ほんとう)のことになるのか?


それとも。


積み重ねたそれはかさを増し、いつかオレたちを隔てる厚い壁になっちまうのか。


……だとしても。


今はまだ確かめたくない。
何かを動かすきっかけを自分から作っちまうんじゃないか。
おまえがオレの前から居なくなるんじゃないか、そう思うと。






確かめる勇気が、なかった。少しも。










*********************************

志波勝己誕生祭09様より、「しばかつみでアナタと一緒の5題」の「知らない人から電話」をお借りしました。


血反吐にまみれるような親友モードは心にかなりのトラウマを残す、と思うのは私だけでしょうか。


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