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8月12日追記:サイトに同じ作品をアップしなおしました。



折れた心に添え木をして立ち直りました、アサマです。
つか一日に何回日記更新してるんだ。GS3効果でお客さんが減っていていつもより余計に人目に触れることがないだろうと安心しきっているからでしょうか。いつもより無駄に叫んでます。

GS3発売カウントダウン企画様が無事終了されたようなので、発売前妄想SSで唯一、企画様に投稿したきり拙宅にはアップしてなかった紺野編をつづきに投下しときます。この話、後でGS3部屋作ってまとめてそこに入れる予定ではありますが。紺野先輩攻略後には本物とのギャップのすごさに「あ~あぁ」って感じになると思いますが…。
企画様のおかげで素敵絵や素敵話に出会えて至福の日々でありました。

わざわざ企画様へ足を運んで拙作を読んで下さったお客様、ありがとうございました!

もし万が一これから初めて読むというお客様がいらっしゃいましたら、あくまで発売前の妄想であるということを念頭に置いてつづきをクリックしてくださいませ。

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何年も前から、他人に言われ慣れていた『その』単語。
自分でも、客観的に見ればまあ、そうかもな、なんて自惚れた事が全く無かったと言ったら嘘になる。


でも。


君にそれを言われるのだけは、もう、御免だ。



君にはもう、言わせない



「ん、よく出来ました。今日はここまでかな」


6月のある日の夕刻。
紺野玉緒は後輩の自宅を訪れていた。目的は臨時の家庭教師だ。
紺野は今年の3月にはばたき学園を卒業し、合格していた志望大学へ通い始めた。
そんな紺野に、ある日、彼が所属していた生徒会執行部で懇意にしていた後輩の女子が言ったのだ。
『わたしも先輩と同じ大学が第一志望なんですけど、今のままじゃギリギリなんです…』
そう言ってひとつ年下の彼女は不安げに肩を落としたものだった。
そんな様子を見て思わず紺野の口をついて出た台詞。
『僕で良かったらたまに見ようか? 勉強』
その提案に即座に彼女が飛び付いた結果が、今この時間だ。
世間体を気にするなら図書館なり公の場所で行うべきなのだろうが、学校や部活の後ではどうしても帰り道が暗くなることが多く、結局は彼女を自宅まで送ることになる。紺野自身は構わなかったのだが、彼のスケジュールを気にし、それくらいなら良かったらウチで、と申し出たのは、あろうことか彼女の母親ーーしかも外交的で割と家を空けていることが多いーーだった。
彼女の無防備なところは母親譲りだったのか、信用され過ぎるのも複雑だ、と紺野がしみじみ思ったのは、つい最近のことだ。


「ありがとうございましたぁ…」


机に突っ伏してすっかり消耗した様子の彼女に、紺野は吹き出しそうになる。
「お疲れ様。頑張ったね」
「紺野先輩、結構…」
「何?」
「スパルタですよね」
「まあね。ほら、口開けてごらん」
「?」
不思議そうにしながらも素直に開けられた口に、紺野は手に用意していたものを押し込んでやる。
「! チョコだあ。甘~い! 美味しい!」
「疲れた脳に栄養補給だ。どう? ちょっとは元気出た?」
「はい!」
現金にも、力強く返事をして彼女は言う。
「スパルタって言ったの撤回します~。紺野先輩やっぱり優しい! いい人!!」
にこにこする後輩に、紺野は肩をすくめる。
「大袈裟だな。単なる『飴と鞭』だよ。だいたい君、僕にそれ言うの何回目?」
「それって、『いい人』ってことですか?」
「そう、それ」
「えー。そんなの覚えてないですよ」
「15回目」
「え?」
「少なくとも、勉強みてあげるようになってから、15回目だ」
紺野の断言に、彼女は目を丸くする。
「数えてたんですか?」
「はば学在学中から、君があんまり連呼するから。つい、なんとなくね」
「だって、ホントのことじゃないですか! 先輩、元生徒会長だし真面目だし優しいし穏やかだし落ち着いてるし爽やかだし面倒見いいし。大学始まったばっかりで忙しいのに、わざわざこうやって勉強教えてくれるし…」
これをいい人と言わずしてなんと言いましょう! などと両手を握り拳にして力説されて、紺野は軽くため息をついた。
「本当は僕、わりと悪(ワル)なんだけどなあ」
「え~、まさかあ。全然説得力ないですよ」
全く信じようとしない彼女に、紺野は意識的に声のトーンを低くして、言った。
「じゃあ…試してみる?」
「え…」
紺野がゆっくりとした動作で眼鏡のフレームに手をかけてそれをはずすと、彼女は呆気にとられたように小さく口元を開けたまま停止した。
そのまま机の端に眼鏡を持った片手をついて、もう一方の手で彼女が座る椅子の背を掴
んで屈み込み、軽く目を伏せて接近。
どんなに鈍くても、それが何の準備段階なのか解らない者はいないだろう。
「っ! …………」
その証拠にさすがの彼女も唐突な接触の前触れに瞳を閉じ―ーそれが反射なのか観念を表すのかは別としてーー小さく身をすくめるのが、レンズのない紺野の視界に入る。


このまま流れに乗るのも悪くはないな、とも思う。
だが、今はこれで十分。少なくともあからさまに拒否されなかっただけで重畳。
……そう、思わなくては。


紺野は小さく息を吐いてから、微かに震える彼女からそっと身を離し、その鼻っ面の先でパン! と手を叩いた。
「ひゃっ!」
妙な悲鳴と共に、ぎょっとしたような、まさに鳩が豆鉄砲をくらったような顔で目を開ける彼女。
そんな後輩に向けて紺野は目を細めて微笑む。
強く胸を焼く甘さと後悔がいつもより無防備な裸の瞳に滲まないように、慎重に。
「せ、せんぱい…?」
疑問符を貼り付けたような物問いたげな表情。当然と言えば当然だろう。
戸惑いを浮かべて自分を見上げる彼女に、紺野は手にしていた眼鏡をかけ直し、腕組みをして頷いて見せた。
「はい、特別授業はここまで」
事務的な口調を装って言うと、彼女は目を丸くする。
「と、くべつじゅぎょう…?」
「そう。年頃の男子に『いい人』を連発して油断してると、思わぬしっぺ返しを喰らうってことだよ。…あ、ここ試験に出るから、くれぐれも忘れないように」
「何の試験ですか、それ!」
赤く染まった柔らかそうな頬が、ぶう、と音がしそうなほど膨らむ。
ようやくいつものペースを取り戻しつつある彼女に、紺野は真顔で、しかし冗談めかした口調で応える。
「う~ん、そうだな…ある意味、生物学?」
「ちょ、先輩! なんか生々しいですよ!」
「あはは、ごめんごめん」
「もう、タチの悪い冗談で人のことからかって…!」
「本当にごめん。悪かったよ、この通り。…でもまあ、これに懲りたら、これからは僕に限らず大の男に気軽に『いい人』って言わないように。OK?」
「はあい…」
唇を尖らせて返事をする彼女に、紺野は自分の荷物を鞄に仕舞いながら言う。
「じゃあ、そろそろ帰るよ。次回までにちゃんとその問題集、終わらせておくこと。何か解らないことがあったら、電話なりメールなりして」
「はい。…ありがとうございました!」
最後はいつもの屈託のない笑顔。そして、玄関先まで見送りに来てくれた。
紺野も普段の笑顔で、それじゃ、と手を挙げて彼女の家を辞す。


やや蒸し暑い外気。表はすっかり暗く、頭上には星が姿を見せ始めていた。
その天空を見上げる振りをして、紺野は彼女の部屋の窓を確認する。
遮光カーテンが引かれていて、中の様子を見ること叶わないのを、分かっているにもかかわらず。


(…いつから、だろうな。こんな風になったのは…)


彼女に『いい人』と呼ばれることに、抵抗を覚え始めたのは一体いつ頃だったかーー。
少なくとも、言われた回数を数えてしまうようになった頃には、もう、とっくに。


『いい人』=『どうでもいい人』ーー特に恋愛的な意味においてだーーなのだと、何かで目にした記憶があった。テレビ番組だったか雑誌だったか、今となっては定かではないが。
そんな立ち位置はまっぴら御免だ、と思う。心の底から。


だが、それだけではなく。


(僕は……彼女が思ってるような奴じゃない)


ついさっき。
彼女の肌に自分の影が落ちるのを見たのを、鮮やかに思い出す。
即興であんな真似が出来てしまうのだから、自分はあまり行儀のいい人間じゃない、と改めて強く自覚。


その上。


日々胸を焦がす濃くて昏(くら)い感情が、紺野の中にはあった。
卒業してしまった自分と違い、未だ彼女とはば学で同じ時間を共有する後輩たち。
その幾人かを思い浮かべるだけで、到底心穏やかではいられなくなる。
そう、殆ど、ある種の破壊衝動を覚える程に。
そんな自分を、決して彼女の前でさらけ出すわけにはいかないけれども。



『紺野先輩って、ホントにいい人ですよね』



本当は、彼女のあの曇りの、邪気のない瞳で、それがさも事実であるかのように言われると逃げ出したくなる。それが一番の本音だ。


だから。
他の誰に何と言われようと構いはしないけれど。



(君には…君に、だけは)



自分のことを『いい人』だとは、呼ばせない。
もう、二度と。絶対に。
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