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真咲編に引き続き、もう誰も続きを覚えてないカレン編第3話です。

のんびり連載って、のんびりどころの話じゃないよ…!
でもこれからもこんな感じで不定期連載です。
最初に「来年のカレンさんの誕生日までには終わる…はず」って書いたからそれに向けて頑張る!(←頑張ってない)

こんな管理人の姿勢を許容できる心の広い方だけつづきをクリックしてください。

発売からわりと時間がたちましたが、一応注意書き。

連載通してネタばれ有です。

*********************************








翌朝。学校。



「お泊まり会?」
「そうそうそう。また、やんない? ウチで」
「うん、もちろん行く!」
「やった! ありがと、さっすがバンビ~! 愛してるぅ! じゃあさ、バンビ の都合のいい日、教えて?」
「わたしはいつでも大丈夫だよ。ミヨはどうかな?」
「えっと、それなんだけどさ、たまにはバンビとふたりで話したいな~なんて思 ってるんだけど……ダメ?」
「それは別に構わないけど…ひとつだけ聞いていい?」
「うんうん、なになに?」
「…喧嘩、したとかじゃないんだよね?」
「もっちろん違う! 誓って違うから! アタシ、ミヨだぁい好きだもん。ま、 言うなれば、恩人? みたいなもんだし」
「そっか、良かった。うん、それならいいんだ。じゃあ…そうだなあ…明日…明 日にしよっか?」
「了解! んじゃ、そういう事でよろしくぅ!」


ーーそんなふうにして、アタシはバンビと約束を取り付けた。
心の中で、手を合わせながら。


例の薬は、昨日のうちに自分で恐る恐る舐めてみた。
綺麗な薄桃色をしたその液 体は無味無臭で、特に体に害がないのは確かみたい…って言うか、朝起きたらな んかいつもよりさらに肌艶がよくなってる感じ? ちょっと舐めただけでこれなら、強力な美容液って言うのもあながち嘘じゃないかも。


夜泊まって寝て、そっから24時間だから実質半日強。
もし、願いがホントに叶うなら、その間だけでも、アタシ…。
ゴメンね、バンビ。


後ろめたさを抱えつつも、一応ミヨにも話を通すために(さすがに薬のハナシは内緒だけどさ)、その日の昼に二人で屋上でランチしたんだけど。


夏の日差しを避けた日陰のコンクリの上、ミヨは箸を持つ手を止めて言った。
「気にしないで。明日は星の巡りが悪い。どのみち参加は無理」
「そっか…。うん、でも、ごめん」
「それより」
ミヨはややつり上がり気味の大きな瞳でじっとアタシを見た。
うっかり覗き込んだとたんに吸い込まれちゃいそうな奥行きのあるその目で。
いつもながら、なんだろう…神秘的、って言うのかな。
でも、それだけじゃない、真実 を視る覚悟のある、強い意志を感じさせる瞳ーー。


「カレン。何を考えてる?」
「えっ? なになに、なんの話?」


まさか、アタシが何しようとしてるかバレちゃってる?


内心どきりとしながら聞き返すと。
「うん…いい。なんでもない。時には、見守るのも大事」
「そ、そぉ?」
「……」


それきり黙々とミヨ母お手製弁当を食べるミヨに、アタシはもうひとつ肝心なことを伝えなきゃならないのを思い出した。


「ミヨ…アンタさ、姫子オバさま、知ってるよね?」
アタシの質問に、ミヨの瞳が今度はキラリと鋭い光を放つ。
「当然。花椿吾郎と並ぶ花椿一族内での実力者。誕生日不明、星座不明、血液型不明、電話番号不明、身長体重不明、カメリア倶楽部なる組織に所属するも、その団体の目的も構成員の詳細も不明。全てが謎に包まれた正体不明の人物。そのプロテクトは、まさに鉄壁…」
「そ、そうだね…その通り」
なにしろ遠縁とは言え、一応一族の一員であるアタシだって、オバさまの詳しい プロフィール、全っ然知らないもん。
「オバさまがさ、アンタに余計な詮索しないようにって伝えておけって、アタシに…」
ホントはもっと怖い言い回しだったけど、そこはソフトに変換してみた。


すると。


「ち…嗅ぎ付けられた」


ちょ、ミヨ、お願いだから可愛い顔で舌打ちはヤメテ…!


「いくらアンタが情報通でも、相手が悪過ぎるよ。やめときなって!」
「イヤ。敵は大きければ大きいほど燃える。大丈夫。次の手は考えてある」
「……」
この不敵な表情…。
ダメだわ、アタシには止められそうもない。


オバさま、スイマセン。
ミヨ、検討を祈る。どうか命だけは大事にね…。



そして。 さらに翌日、金曜日の夕方。


自分の家の居間に鳴り響いたインターフォンの呼び出し音に、アタシは心臓が跳ねるのを服の上から抑えつつ、壁に取り付けられた受話器を取り上げた。
小さな液晶画面には、マンションの玄関口入り口に立つバンビの制服姿。
バンビは、ちょっとだけ用事があるからって、一度学校から家に帰宅してからこっちに来るって話だった。
『カレンさん?』
「はいは~い、今開けるから、ん待って!」
『ラジャ!』
言って小さく敬礼する様子が、あぁん、もう、ホンットカワイ~ィんだから、あの子ってば!
なんていうかこう……きゅんときちゃう!
緊張……はこれから企んでることがあるから、消えやしないけど、アタシはただバンビと過ごせる、と思っただけでも心が浮き立つのを感じる。 バンビ、アタシ、やっぱりアンタが大好き。


しばらくして今度は玄関のドア脇のチャイムが鳴ると、アタシはすぐさまバンビを迎え入れた。
「いらっしゃ~い♪」
「お邪魔しま~す。……うーん、やっぱり相変わらずステキなお部屋だね」
「うっふっふ。ありがと! ささ、どぞどぞ、お楽に。あ、荷物、部屋に置いてくるから貸して」
学校帰りに直で来る時にはアタシの家のものをレンタルしてるけど、今日のバンビは一度家に戻ったせいか、小ぶりのボストンバッグを持っていた。それとあわせて部活の支度なんかを含めた学校の荷物もある。
「いいの?」
「いーのいーの! 力仕事は、大人しく俺にまかせておけばいいんだよ?」
「カレンさんてば……いいよ、自分で運ぶから」
「えー、いいのにぃ」
「自分と同じ女の子に自分の荷物を運ばせるほど、やわじゃありません」
真顔で言われて、アタシはちょっとドキリとする。
「……同じ?」
「そりゃカレンさんはバレーで鍛えてるかもだけど、わたしだって柔道部のマネージャでかなり力ついてるんだから。猛者どもの世話は大変なんだよ?」
冗談めかして言うバンビはイタズラっぽい笑顔だったけど、アタシはうまく笑うことができなかった。


アタシがこうして男役を買って出ると、たいていの女の子は喜ぶ。
アタシは、カワイイ女の子が喜ぶ顔が大好き。 だから、その役回りはアタシには性に合ってる。
合ってるはずだ。
だけど。


「……バンビ……」
「カレンさんの部屋に置いていいでしょ? その間に、いつもの美味しいお茶、期待してるからね?」
「……ウン、任せといて!」


それから。


ふたりで食事の支度をして、ふたりでテーブルを囲んでお夕飯。
いつもはつけっぱなしのテレビは今日は用無し。
洗い物はアタシが洗ってバンビが拭き上げて。
それが終わったら、順番にシャワー。
お先にどうぞって言ったのに遠慮するバンビ。
その方が都合がいいか、と思ってアタシは先にシャワーを浴びた。
そしてバンビがシャワールームにいる間に、準備を済ませる。


「お風呂いただきましたー」
持参したパジャマ姿で濡れた髪をタオルで拭きながらリビングに戻って来たバンビに、 アタシはトールグラスを差し出す。
「どう? 風呂上がりに一杯。グレープフルーツジュース生絞り100%」
「わぁ、ありがとう! 喉渇いてたんだ。嬉しい!」
にこにこしてグラスを受け取るバンビ。その無邪気な様子に心が痛んだ。
「さっそくもらっていい?」
「う、うん……」
「いただきまーす」
グラスに口をつけるのを、じっと見つめる。


今なら、止められる。
そう思った。


けど。


……結局、アタシはバンビの白くて綺麗な喉元が動く様子を喰い入るように見つめているだけだった。
毒じゃない。毒じゃないんだから。
それに、この間の説明はオバさまの冗談で、効き目なんかないかもしれない。そう、肌がつるつるになるだけの薬なんだ、からかわれたんだ、きっと。



『その方にこれを飲ませて、体の一部を繋ぎ、一晩一緒に過ごすのです。次に目覚めた時には貴方はその方に、その方は貴方になっているでしょう』



あるわけない。そんなこと。
祈るようにそう思ったのとはうらはらに、バンビが飲み終わるのを見届けてから、アタシは自分の手元のグラスの中身を飲み干した。


「……歯も磨いたことだし、部屋でおしゃべりしながら、寝よ?」
「うん。そだね。夜更かしは美容の敵…だもんね?」
「そうそうそう。……あの、さ。今日は一緒のベッドで寝ても良い? アタシのベッドなら、ふたりなら充分の大きさだから。エアコン、弱冷房で効かせとくし」
「うん、別にいいけど。……ふあぁああぁ」
「……眠い?」
「ん。急に眠くなって来ちゃった……」


そうしてふたりで並んでベッドに入る。
部屋の電気を消して、真っ暗にして。
アタシはいつもと同じ自分の部屋の天井を見ながらバンビに尋ねる。
なんでもいい、何か話していないと、耳についてるのかと思うくらいに煩い、アタシの心臓の音をバンビに聴かれちゃう気がしたから。


「……ねぇ、バンビ」
「……なあに?」
「気になってる男子とか、いる?」
「また……いつもの質問?」
「そう」
「……んー……恥ずかしいから……」
「てことはいるんだ?」
「…………」
「バンビ?」
「…………」
「……寝ちゃった……?」
「…………」


返事の代わりに聞こえてくる寝息。
アタシは、自分のすぐ横にあるちいさな手をとって、きゅっと握りしめた。


ゴメンね、バンビ。 …ホントに、ゴメン。



罪悪感と、ひょっとしたらという期待感。
ドキドキして、眠れそうもない。全然。


そう思ってたのに。


静寂を包んだ暗闇の中、気に障るくらい耳に響いていた時計の音。
自分の心音。
それがぷつりと途絶えて、いつの間にか失う意識。






そして、朝。







カーテンの隙間から射し込む薄日に気付いて目を開けた時、アタシの隣にはアタシが横たわっていた。












to be continued…
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