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8月12日追記:サイトに同じ作品をアップしなおしました。



今朝のプレイで突然滾った設楽編SSをお送りします、アサマです。

あれー、予告してたコウ編と大迫編はどこへ行ってしまったんだらう(いや、ちゃんとケータイに書きかけのデータあるけど)。
なんかもう勢いでですね、ぶわーーーっと書いちゃいました。突然雨が降ってきて、子供を予定してた外遊びに連れて行けなくなったせいかなあ(←

というわけで、設楽編です。
まだ設楽先輩の攻略、あんまり進んでなくて(王冠設楽先輩にだけついてないw)、全然設楽情報集まってないのに書いちゃいました。カレン編同様プロトタイプ的なものだと思っていただけるとありがたいです。

ちょっとでもネタばれダメダメ、ハッピーな設楽先輩じゃないとNGというシタラーズのお嬢様は全力でお逃げください。

オッケー、カモン(はぁと)と言うニーナばりのお嬢様はつづきへお進みください。

しかし私の書く話ってなんでこう大げさになってしまうんだろうなあ…書き始めた時はもうちょっと軽い話だったのになあ…。大げさすぎてかえって笑ってしまうかもしれません。そしたらすみません。

僕はそれを天に還す





「暑いな…」


設楽聖司はうんざりしてどっかりと自分の席へと座り込んだ。
教室ではなく、グラウンドへ置かれた椅子は嫌な具合に熱されていて、さらに設楽の機嫌をそこねる。


6月だと言うのによく晴れた今日は、はばたき学園の体育祭の開催日だった。楽しみにしている者から見れば『絶好の体育祭日和』だが、設楽のように身体を動かすことに積極的な意味を見いだせない者にとっては、炎天下に長時間身をさらし、出たくもない競技で低い評価を付けられて屈辱的な思いをさせられる、まさに厄日であるとしか言いようがない。
おまけに三年生で高校最後の体育祭だからと、クラスの連中が異様に盛上がっているのも設楽にとっては鬱陶しい。まったくもって理解しがたい。こんなもの、希望者だけが参加すれば良いのに、と言う思いは幼少の頃から抱き続けていた。
だが、まあ、大学へ行けばこんな行事に出ることもなくなる。これが人生最後の体育祭だと思えば、さすがの設楽と言えどもいささかの感慨をいだかないこともなかった。


そんなふうに思いながら白線の引かれたトラックの外側、その最前列ーー設楽はあまり身長が高くないので男子の席では前の方だーーでタオルを肩にかけてふんぞりかえっていると。


パァン!


鳴り響くスタート用のピストル音。
いつの間にか次の競技が始まっていて、スタート地点から数人の女子が走り出したところだった。その中に見知った顔があって、設楽は口許を軽く上げる。


(あいつ…ふぅん。わりと速いじゃないか)


設楽のひとつ下の後輩の女子。その彼女が先頭を切って飛び出すと、少し走ったところで立ち止まり、しゃがみこんだ。次に立ち上がった時には、なにやら紙片を手にしているのが見えた。きょろきょろと辺りを見回している様子に、設楽はああ、と内心頷く。


(そうか。借り物競争か。なるほどな)


彼女の探し物はなかなか見つからないようで、紙を片手に情けない顔で観客席付近をうろうろしている。焦っているのが丸わかりのその様子に、設楽は吹き出しそうになった。


(どんくさいやつだな。せっかくのスタートが台無しじゃないか)


あとでからかってやろう、そう考えていた設楽の方を向いた彼女が、ハッとしたような顔になるのが見えたーーと思ったとたん、彼女が一直線に自分に向かってダッシュで近付いてくるのに気付き、設楽はぎょっとする。


案の定、駆け寄って来た彼女は設楽を見上げると叫ぶように言う。
「設楽先輩!」
「な、なんだよ」
うるさいな、デカイ声で呼ばなくても聴こえるーーそう文句を言おうとした設楽の手首の辺りを、彼女が何も言わずに突然引っ付かんだ。
「っ! なにす…!」
「一緒に走ってください!!!」
「なっ…!」
断る間もなく彼女は設楽の手を掴んだまま前に出る。凄い力で引っ張られて、転がり出すように設楽も走り出した。
背後から口笛やら歓声が飛んでくるのがかすかに聴こえたが、そんなことに頓着している場合ではない。設楽は必死で両足を動かした。もしかしたら、今までの人生の中で一番一生懸命走ったかもしれない。


そして結果は。



「…ビリ、だったな」
設楽は腕組みをして目の前の後輩を睨み付けた。二人は4位の旗の前に立ち、競技が終わるのを待っている。
「すみません…」
すっかり恐縮してしょげかえる彼女。
その様子に設楽は舌打ちした。
「おかげでかかなくてもいい恥かいちゃったじゃないか。俺のせいだとか言うなよ。おまえの出だしが悪かったんだからな」
設楽の言い分に、彼女が弾かれたように顔を上げた。
「もちろんです! 先輩のせいなんかじゃないですよ。……急に引っ張って、ごめんなさい。一緒に走ってくれてありがとうございます」
大きな瞳で真っ直ぐ見上げられ真顔で言い募られて、設楽は慌てて視線をそらす。ごまかすように咳払いをすると、
「……誰だよ、借り物に『先輩』なんて書いたのは。人が借り物なんてデカ過ぎるだろうに」
「あ、違うんです。『先輩』じゃなくて」
「じゃあなんだよ。『ピアニスト』とでも書いてあったのか? まさか『金持ち』とかじゃないだろうな」
「先輩、それ自分で言いますか普通…違います、これです」
そう言って、借り物が書かれている紙切れを見せられて、設楽は瞬時に表情を失う。
「ミヨとカレンさんを探したんですけど、二人とも見当たらなくて…。他にって思ったら、設楽先輩しか思い付かなくて」
「……る」
「えっ?」
「もう戻る。出場者はおまえなんだから、俺まで一緒に残ってなきゃならない道理はないだろう」
「あっ! そうですよね! す、すみません、つい……」
「じゃあな」
「お疲れ様です。本当にありがとうございました」
「ああ。……」



設楽は競技スペースを避けてトラックを横切ると、自分のクラスの席へと戻った。
「お疲れ、設楽」
後ろの方からクラスメイトで友人の紺野玉緒が声をかけてくる。
「惜しかったなあ。設楽、速かったのに」
「くだらない世辞はいい」
「そう? 少なくとも僕は設楽があんなに走ってるところ、初めて見たよ」
「うるさい。疲れたから休む。しばらく話しかけるな」
「はいはい」
設楽の不遜な物言いを紺野は軽く流す。他のクラスメイトならムッとするようなどんな痛烈な皮肉も、なぜか紺野には威力が薄い。目に見えないクッションでも被っているんじゃないかと思うほどだ。
設楽は短い息をついてタオルを頭から被る。何も見たくないし聞きたくない。そして、誰にも自分を見られたくなかった。


先ほど彼女から見せられた紙切れに書かれていた単語が、心に重くのしかかる。



『親友』



そう書かれていた。宇賀神みよや花椿カレンを探していたというのは、つまりはそう言うことだ。そしてその次に設楽の姿を探した彼女の認識は間違ってはいない。何故なら、設楽自身が一度はその関係を望んだからだ。


近くまで来たついでに寄った彼女の自宅。その時に派手な見た目の男と彼女が仲睦まじく寄り添うようにして歩いているのを見かけた。
そしてその後すぐに話を聞かされた。好きな、男がいると。


『最初はナンパされて、軽い人だなって警戒したんですけど、設楽先輩と森林公園で待ち合わせして、先輩が遅刻してきた時があったじゃないですか? あの時、すごくしつこく声をかけてくる男の人から庇ってくれて…。その後も何度か偶然会って、すごくいい人だなって言うのがわかって。次の年の入学式の日に再会した時には本当にびっくりしました。こんなドラマみたいなことあるんだなって。運命って言うか…。向こうはなんとも思ってなくて、わたしが勝手にそう信じてるだけなんですけどね』



そう聞かされた時、少なからずショックを受けたのは事実だ。
だがそれは、人を寄せ付けない態度を取り続けていた自分に不思議となついてきた彼女を、いつの間にかどこか手のかかる妹のように大事に思っていたせいだ、と設楽は判断した。…その時には。


けれども、からかいながらも彼女の恋愛の相談を受けているうちに…気付いてしまった。
自分は間違っていたのだと。妹だなんて、単なるすり替えだったのだと。


(同じじゃないか、これじゃ)


中学二年の秋。
あの時出場するはずだったコンクールの時とそっくり同じ。
敵わない相手と遭遇し、勝負しなければ負けたことにはならないと思って舞台に上がるのをボイコットしたあの時と同様に、自分は恋愛から、何より彼女の好きな男と争うことから逃げたのだと、今ならわかる。


もっとも、あの時より、さらに状況は絶望的だ。
今度こそ絶対に勝てない。敗北することはわかりきっている。
何しろ彼女本人の口から、もう既に決定的な宣告を受けてしまっているのだから。
それはまるで設楽にとっては、ピアニストとして凡人であると言う烙印を押されるのとどちらが、と思うほどに残酷な真実だーー。


「…………」


どうしてこんなことになってしまったのだろう。
ピアノへの再起を決めた今になって、こんな。
自分には彼女が必要なのに。
彼女に必要なのは自分ではないのに。
今さらこんな想いに気付いてしまうなんて。



最初から彼女に優しくしていれば結果は変わっていたのだろうか。
待ち合わせに遅刻していかなければ?
もっと早く自分の気持ちに気付いて打ち明けていれば、少しは彼女も自分を男として見てくれたのかーー。



そこまで考えて、設楽は立ち上がった。
被っていたタオルを投げ捨てるようにして椅子にかけると、席を離れる。


「設楽、どこに行くんだ?」
懲りずに声をかけてくる紺野を見もせずに、設楽は言った。
「音楽室。ピアノ弾いてくる」
「ピアノって…今から?」
「何度も言わせるな」
設楽の固い口調に、紺野はため息をついて頷く。
「わかった。先生には僕から言っておくよ」
「ああ」
短く応えて設楽は再び歩き出す。
昇降口で上履きに履き替えると、真っ直ぐに音楽室へと向かった。音楽室の鍵は、授業および吹奏楽部が使用しない時に限り、という条件で、いつでもピアノが弾けるようにと合鍵を預かっているので問題はない。


解錠して室内に入ると、閉め切られていた窓を開け放ち、それから、ピアノへと向き合う。
椅子に腰かけ、両手の指を組んで揉むように軽く動かした。


そして、弾き始める。
一心不乱に。
無我夢中で。
見えない何かに聴かせるように。問い掛けるように。
その相手はもしかして、いるかどうかもわからない音楽の神とでも言うべき存在かーー。


いつの間にか身体中から吹き出す汗。
髪を振り乱し、呼吸も忘れるように、自分の何かを削り、魂をのせるようにして音を産み出しながら、設楽は思い出す。
昔、まだ幼少の頃。
貴方は音楽の神様に愛された特別な人間だ、などと言われていたこと。自分でも本気でそんなふうに信じていた頃があったことを。



(もし…もしも)



自分が、周りの人間の言うように真に天賦の才をもつ者ならば。
それを、天に還してもいい。
この先の人生は、自分の力、その努力だけでピアノと関わっていくと誓う。
だから、かわりに。



(人にーーあいつに愛される才を、俺に下さいーー)



それは。
設楽聖司が生まれてこの方、初めて神に祈った瞬間だった。








*******************************

最後まで読んで下さってありがとうございます!
毎回言ってますが、なんか色々すみません。

実は実際のゲームプレイでニーナを親友にしようと思ってたのに、
パラ上げのせいでデレてきていた設楽先輩をうっかり親友にして
しまったのです。
で、親友台詞聞いて、体育祭で何度も繰り返し出てくるみよちゃん
スチルをまた見たら、ついついこんな話が出来てしまいました。
最初はね、ニーナか嵐の話にしようと思ってたんだけどね、
やっぱすげーぜ、親友モードマジック(真咲口調)。

実はもう一本設楽親友話のネタがあります。こっちはちゃんと
話になるかまだわからないですが…。

GS3の面白さ、マジパネェ!

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