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8月12日追記:サイトに同じ作品をアップしなおしました。


昨日突然浮かび上がってきた琉夏編をお送りします、アサマです。

予告すっとばしまくりですみません…!
先日の設楽編と同様にいきなり降りてきたのです。
正直、W王子だけど、コウは書けてもルカは書けないんじゃないかと思っていました。ルカのシュールさが私には出せない、と思っていたのです。

それでも、昨日の時点ではシーンの断片だけで、いつか仕上げよう、と思っていたくらいだったのですが、今朝のプレイで初めて揉め状態が起きまして! 桜井兄弟がバンビをめぐって…! なんぞこれ美味し過ぎ…!
そのイキオイもあって、赤子昼寝中に怒涛のごとくケータイで打ち込んで仕上げたものです。なのでまだタイトルも決まってないという…。そのうち思い浮かんだらつけます、タイトル。(さっき手直ししてたら思いついたのでつけちゃいました。でもまだ仮題かな?) いつにもまして荒削りな話です。低クオリティ。


今回シュールさだけでなく、ルカという少年に関して自分なりにかなり踏み込んだ解釈がされていて、それがまったく見当違いの可能性があります。
なので、ネタばれがいやというだけでなく、ゲームのルカのイメージを少しでも壊したくない、という方はスルー推奨です。
アタシダイジョブ! という方だけつづきにお進みください。


メッセージのお返事は後日いたします! 申し訳ありませんが、もう少々お待ち下さい!!

******************************



泣き虫ヒーロー





「イテテ…」


夏の日の夕暮れ時。
俺は、いつもの海岸沿いの道を家ーー町外れにある元ダイナー、その名もWest Beachーーに向かって歩いてた。
その足を少し引きずってるのは、さっき余多門の連中と一戦交えてきたからだ。


あいつら今日は大人数で来やがって…ま、そんな卑怯な悪者どもは不死身のヒーローによって、こてんぱんにやっつけられたことは言うまでもない。


切れた口元から血が滲んで、鉄の味が舌の上に広がる。親指で口角を拭うと、少しだけ赤いものが着いてきた。


大した怪我じゃないけど、コウに見つかんないようにする…のはムリだな。なんて言い訳するかなあ…。兄ちゃん、おっかねぇ。


そんなことを考えながら歩いていると。


「琉夏くーん」


後ろから、今コウの次に会いたくないやつの声が聞こえてきて、ついつい溜め息。
仕方なく振り返ると、やっぱりだ。
高校入学の前日に久しぶりに再会した、俺とコウの幼馴染みの女の子。
はば学の制服のスカートを揺らしながら駆け寄ってくる。


「よ。今帰り? 遅いね」
笑顔で言う俺に、目の前の顔がみるみる曇る。
「! ……ど、どうしたの、その顔!」
「生まれた時からこんな顔だよ。キレイだろ?」
おどけてみたけど、ハの字になった眉が元に戻ることはなかった。
「喧嘩、したの?」
「まあね」
「手当てしなきゃ…」
「へーき。舐めとけばそのうち治る」
「またそんな適当なこと言って! 他にも怪我してるんじゃない? わたし、手伝うよ。おうち、行ってもいい?」
「オマエが手当てしてくれるの?」
「うん」
「そっか…。俺、ホントは身体中痛いんだ。全部手当してくれる?」
「いいよ」
「やった。じゃあ身体中舐め…」


とたんにバシン! と勢いよく背中を叩かれて、俺は悲鳴を上げた。笑いながら。







家に着くと、コウは居なかった。
今日は水曜だから、あいつ、バイトの日だ。


制服汚れちゃってて、どうせ着替えもしなきゃならないからと、俺の部屋で手当てすることになった。
あんまり余分なもの(コウのよくわかんねぇガラクタコレクションを除く)がない、必要なものすら足りないウチだけど、一応薬箱はあった。実家を出るときに母さんに唯一持たされたものだ。これだけで俺たち兄弟のこと、見透かされてるなって思う。


階段を上がった二階、俺のオンボロベッドに、二人で並んで腰かける。
「……染みる?」
口元を消毒液を含ませた脱脂綿で押さえてくれながら聞いてくるそいつに、俺は笑ってみせた。
「へーき。無敵だから」
「ならいいんだけど…」
他にも擦り傷にはバンソウコウをぺたり、腕と足に軽い打撲があって、湿布を貼って包帯を巻いてくれた。大げさだ、と俺がこぼすと、普通です、ときっぱり返された。
「随分手慣れてるんだな。ウマい」
「ちょっと、練習したの」
どうして? と聞こうとしてやめた。きっと野暮だから。
「手当てしてくれてありがと。…ん」
「? なに?」
「いや、お金持ってないから、治療費をチューで…」
「要りません」
「あ、そう。それは残念」
言って俺が足をぶらぶらさせていると、薬箱を片付け終わったそいつは、なんだか思い詰めたような表情でまた俺の隣に腰を下ろす。


んー。なんか、コウじゃないけどメンドウなことになりそうな予感?


すると案の定、幼馴染みはまるで母親みたいに慈悲深い顔をして話し出した。


「琉夏くん、もう危ないことしないで。喧嘩もやめて。お願いだから…自分のこと、もっと大事にして?」
「…………」


やっぱりだ、と俺は思う。前から似たようなこと言われてたけど、今日は本格的かも。
心配してくれてるのはわかってた。迷惑かけちゃったこともある。
もったいないくらいなんだろうなって思う気持ちもある。この世にひときりの身の上を心配してくれる人が、またひとり、増えたんだから。


だけど。
素直には、頷けない。
どうしても。


……そんな顔するなよ。コウにだっておんなじこと言ってるんだろ?
誰にでも優しいくせに。俺だけのじゃ、ないくせに。
中途半端に心配なんかするなよ。


そう思うとさ、一瞬にして心が、水面に墨を落としたみたいに真っ黒に染まるんだ。そうやって汚い色に染まった俺は、目の前の真っ白でキレイなオマエにも、その滴を一滴、落としてやりたくなるーー。


だから。
俺は言った。いつもの軽い感じを装って。


「…お願い、聞いてほしいの?」
「うん! お願い!」
勢いこんで頷く様子に俺は白い目で首を振る。
「ダメ。そんなんじゃぜんっぜんダメ」
「えっ?」
「そうだな、こう、俺のシャツの裾、ちょっぴり掴んで?」
「え、えっと……こう? 」
「そう。それで、肩少し縮めて上目遣いして。視線、絶対にそらさないで。ちょっと困った感じだとなおいい」
「こ、こう?」
「いい。スゲェいい。超ストライク。……で、そのままでこう言って。
『琉夏くん、カッコイイ。大好き。世界で一番愛してる。ここで今すぐ琉夏くんのものにして』」
「………!」


動揺して少し身を引くオマエ。その拍子にボロいベッドがギシギシと軋んだ。
部屋に響くその音の生々しさに、オマエがさらにギクリとするのがシャツ越しに伝わってくる。
そして、そのまま無言。視線だけは、辛うじて俺からそらされなかったけどね。


「上手に言えたら、聞いてあげるよ。お願い」
「…………」


俺の意地悪に、演技じゃない、ホントのホントに困った顔。
そうだよな。
嘘でも言えるわけないんだ。
オマエ、すっごい恥ずかしがりやだもん。しかもコウのいない家で俺と二人きりのこんなシチュエーションなら、なおさらだ。


だから。


俺もオマエのお願いを聞かないでいい。自分で自分を大事にするなんて言う、出来っこない約束をしなくてもいいんだ。
だってさ、俺は…幸せになっちゃ、いけないんだから。


俺を見上げる戸惑う瞳。
でも、大丈夫だ。安心して。今、解放してあげるから。


後は俺がいつもみたいにおどけて、なんちて、って言えばいい。そしたらオマエもホッとして、それから膨れた顔でもう! って言って、何もかも元通り。それでこの話はオシマイ。


そのはず、だった。
それなのに。
俺が普段通りのとぼけた顔を作ろうとしたその時。
信じらんないことに、震えた、小さくて微かなたどたどしい声が。けど、確かに、俺の耳に。



「る、かくん、カッコイイ。だ、だいすき…世界で一番あい、してる。こっ…ここで、いますぐ、るかくんの」
「……!」



ものにーーそこまで聞くとたまらなくなって、俺はその口を塞いだ。
耳まで真っ赤になった顔、そこで一生懸命に言葉を紡ぎ出す唇を。


……自分の、てのひらで。


本当はもっと別のところがよかったけど、そしたら俺、ホントのクズになっちゃうって、思ったから。
オマエにここまでさせる時点で、もう十分過ぎるほどクズ野郎なんだけどさ。


でもーー結局それだけじゃ堪えきれずに、唇から手を離して。
ビックリして目を丸くしてるオマエのその肩を、両腕で抱き寄せた。
それだけは、どうしても、どうしても我慢できなくて。


その勢いで再び唸る古いスプリング。
その音が、今度は悲鳴みたいに聴こえる。
それは、くだらない戯れ言を口にするのを無理強いさせられそうになった、オマエの心の音?
それとも、今にもバラバラになりそうな、俺の?


……わからない。わからないよ。俺、バカだから。
こんなイカれた頭でまともな判断なんて、できるわけねぇ。


「る、るかくん? どうして…?」
「それ、俺の台詞だ。どうしてそこまでしようとするんだよ。俺なんかのために。そんな価値ないよ、俺。オマエに何にもしてやれない。何にもあげられないんだ」


オヤジにも、母さんにも。……コウにも。
善良な人たちに一緒に重い荷物背負わせるばっかりなんだ。きっと、オマエにだってそうだ。


だけど、そんな俺に告げられたのは。


「違うよ。琉夏くんのためじゃないよ」
きっぱりとしたその否定。
だけど俺は信じない。
「ウソだ。だったら、誰のためだよ」
「もちろん、わたしのためだよ」
「……?」
「だって、そう言ったら琉夏くん、危ないことやめてくれるんでしょ? 琉夏くんが怖いことしないようになったらわたしが安心できるから。だから、わたしのためなの。そのためだったら、このくらいのことなんでもないよ。でも……迷惑、だよね。余計なお世話、なんだよね。だから、きっとわざとこんなこと……」


ごめんね。


か細い声が胸のあたりに響いて、俺は泣きそうになる。




ひとりの夜。
雑踏の中の昼。
周りの音が何も聴こえなくなってアタマの中が空っぽになると。


死にたく、なるんだ。


ひとりぼっちの俺を、オヤジと母さんが引き取ってくれて、コウが兄貴になってくれて。
おまえにも、また、逢えて。
俺みたいな出来損ないには出来すぎた家族。出来すぎた幼馴染み。
そんな人たちに囲まれてると、俺を産んでくれた人、俺のせいで逝かなきゃならなかったひとたちのこと、少しずつ、少しずつ忘れそうになる。
だけど、忘れたら消えちゃうんだ。なくなっちゃうだろ? だから、覚えておかなきゃ。俺にできるの、そのくらいだから。
でもそうすると、心がどんどん引っ張られる。
あのひとたちが居る場所が俺のホントの居場所。
だったら、俺、行かなくちゃ。
鍵を、サクラソウを探して、逢いに。
還らなくちゃ。在るべき場所に。
帰りたい。帰りたいよ。帰りたいんだ。家に、帰りたい。


心の全部で、そう願いそうになる。


でも、ダメだ。
あのひとたちに、父さんと母さんにもらった命だから。
そんなふうにしたら、本当に二度と会えなくなるって、神様が言ってるらしいから。
残される人たちが、哀しんで、苦しむから。
コウが。
オマエが。


行きたくて、でも行けなくて。
そのふたつの正反対の思いで、引き裂かれそうになる。動けなくなる。
どこにもないよ。
俺の居場所も、進むべき道も。


だから、ここからいなくなるかわりに。
何も考えないで、何も欲しがらないで、今日みたいにくだらない連中を相手にしてるとさ。
血が沸騰したみたいに体中が熱くなって。
生きてる…感じがする。
痛みだけ、あればいい。それ以外、いらない。
それだけあれば、このまま生きていられるような気がするんだ。
生きてていいような気が、するんだ……。


そう思ってたのに。


おまえが、こんなに近くに、そばにいると。
優しい言葉をくれるとさ。
弱くなる。俺。
ひとり残されてから、きっとずっとずっと隠れんぼして泣いてるこどもの自分が、外に出たいって、僕を見つけてよって、ワガママ言い出すんだ。


普通に、当たり前に生きたい。
幸せになりたい。
みんなと同じになりたい。
きらきらしてるそれを、俺にも、ちょうだい。
寂しいのも痛いのも悲しいのも辛いのも、もうイヤなんだ。
苦しいよ。胸の真ん中が。
助けて。誰か。
助けてよ。オマエが。


そう、言いそうになるんだーー。



「琉夏くん、泣いてるの…?」
腕の中から気遣わしげな優しい声に尋ねられて、俺は軽く笑い声をたてた。
「泣いてないよ。泣いたりするわけない。なんたって俺、不死身のヒーローだからね」
「…ちがうよ」
「…俺、ヒーローじゃない?」
「ちがうの。そうじゃなくて…。ヒーローだって泣くよ。…ううん、みんなのために戦う優しいヒーローだったら、きっと泣くのが当たり前だと思う。もしかしたら、人一倍泣き虫かもしれないよ?」
「…………」
「琉夏くん…?」
「ごめん。もう少しだけこのまま…お願いだから」
「うん。いいよ…」
「…………」


そうやって、しがみつくようにしてオマエを抱き締めてると。



『泣き虫ルカ!』



どこからかそう囃し立てる声が、聴こえてくる気がした。



でも、それでもいいのかな?
泣き虫で弱虫でもヒーローになれる?
このままの俺でも、オマエなら許してくれる?
いつか、そう聞いてもいい?




夕暮れの日差しが差し込む部屋の中。
俺は、そんなことを考えながら、外から聴こえる波の音に耳を傾けてた。



腕の中にいる、赦しの天使を抱き締めて。
そのまま、ずっと。
ずっと。




***************************


最後まで読んでくださってありがとうございます!


病院スチルのルカの涙と「うちに帰りたい」を思い出すと、
それだけで泣きそうになるのです。
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