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昨日に引き続きカレン編第二回目を投下です。
勢いのあるうちに少しでも…と思っているだけで、毎日更新を目指しているわけではありません(堂々と言うなw)。

多分あとから色々矛盾とか出てくるんだろうなあ…。そしたら直して新規作成予定の3カテゴリにぶちこむ予定です。現在の連載はプロトタイプと思っていただけるとありがたいです。

ではでは、ネタばれおkな方だけつづきへお進みください。

********************************









「だはあぁぁあ、つっかれたぁん!」


我ながらだらしない、と思いながらも、玄関先でヒールをポイポイ脱ぎ捨てて、ようやく自分のマンションの部屋へと足を踏み入れる。


『明日も学校がありますので』


そう言って適当なところで抜けてきたパーティー。
あ~、もう、ホント駄目。部活の後より疲労困憊。
シャワーで汗流してすぐ寝よ…。


そう思いながら先に居間にたどり着いたんだけど。


電気をつけたとたん、お気に入りのソファーセットにあるはずのない人の姿を見つけて、あまりの驚愕に、ひぃ…! と自分の喉から妙な声が漏れた。


「ごきげんよう、カレン。お帰りなさい。冷房、お借りしました。今日もとても暑いわね?」


何事もなかったかのようにこちらに笑顔を向けてきたのは、ヒラヒラフリフリをふんだんにあしらった服を着た、フランス人形のような風貌の年齢のよくわからない女性。


「ひ、ひめっ、姫子おば…」
「おば!?!?!?」
瞬間グワッと飛んでくる何もかも射殺すような鋭い視線。
「あー、いや、えっと、その、ひ、姫子お姉さま、お晩です」
「あら、古風な夜のご挨拶(はぁと)」
「…………」


あっぶな! 危うく今日がアタシの命日になるところだった…。



花椿姫子。



吾郎オジさまの姪で、事実上現在の花椿家のNo.2にあたる人だ。ファッションに関してもゴロー先生の右腕って感じで、はばたきネット内でふたりが担当してるコラムには世界中からアクセスが集中して、サーバーがダウンしたことがあるとかないとか。
この人、年齢不詳で何考えてるかわかんなくって、しかもアタシが物心ついた時からずっとこの姿なんだよね…とりあえず、歳のことについては触らぬ神に祟りなし、って感じ?
と、とにかく何しに来たのか確めないとだよ!


「お、お姉さま、どうしてここに? どうやって入ったんですか? 何故電気をつけないんです?」
ついつい矢継ぎ早に質問を浴びせると、姫子オバさまは、大きな瞳を見開いて、いやだ、落ち着きなさいカレン、とアタシをいさめる。


「人工的な明かりなどわたくしには必要ありません。それに、光は時に暴力的に人の真の姿を暴き出す…あなたにも覚えがあるのではなくて?」
淡々と謂われて、ドキリとする。
意味はよく解らなかったけど、自分の何かをピンポイントでえぐられたような気がした。
思わず胸に手を当てるアタシに、オバさまは続ける。
「ここに入る方法などいくらでもあります。花椿の力をもってすれば造作もないこと」
「! ……」


自分もその中のひとりなのに、ゾッとして立ちすくむ。
怖い、と感じた。
何もかもを見透かすような瞳。
どこかミヨに通じるところがあるような気もするけど、次元が違う。
きっと吾郎オジさまよりこの人の方がずっと怖いーー。


「クスッ。冗談です。怯えないで、可愛い子。用があったので、貴女のお母様に鍵をお借りしたの。オートロックと言うのは不粋ね。姫子はあまり好きではありません」
「あ、はは…そう、ですか…」
言いながら、その種明かしに肩の力が抜ける。


もう、ママってば余計なことして…! 
そう思ったけど、この人の言うことには、きっと自分だって逆らえないだろう。


黙るアタシに、姫子オバさまは、、もうあまり時間がありません、本題に入りましょう、と言って視線を自分の向かいに落とした。座れってことみたい。
アタシは自分で選んで家具を配置したはずなのに、他所の家に来たみたいに緊張しながら室内を歩いて、オバさまの前に腰を下ろした。
すると。


「これを」


いつの間にどこから取り出したのか、オバさまはテーブルの上に瓶を置いた。


「貴女、もうすぐお誕生日でしょう? プレゼントです」
「あ、ありがとうございます」


アタシは恐る恐る手を伸ばしてテーブルの上からその瓶を取り上げる。
小指の高さ程度で、コルクで詮をしてあるそれの中には、ピンクパールを溶かしたような綺麗な色をした、粘性の高い液体が入っていた。ちょっと見ただけだとネイルみたいな感じ。


「あの、これは…?」
「花椿家に代々伝わる秘薬のひとつ。自分と他人の人格を入れ替える力があります」
「は……?」


ジブントタニンノジンカクヲイレカエル。


突然言い渡されたその単語の羅列を、アタシのアタマはうまく処理できない。単なる音としてしか認識できなかった。


「信じられない、と言うお顔ね?」
「…信じられない、と言うか、意味が良く…」


わかりません。
アタシが素直にそう言うと、オバさまは微笑した。
「言葉の通りです。例えれば、わたくしの中に貴女が入り、貴女の中にわたくしが入る、と言うこと。先に口にした方は、しばらく眠ったままになってしまいますけれども」
「…………」


なんとか意味を飲み込めても、とてもじゃないけど、信じられなかった。そして、なぜこんなものを渡されるのかもわからない。


「クスッ。いいのですよ、信じなくても。その場合はひとりで普通にお飲みなさい。とても強力な美容液としても使えます。よく効いてよ? わたくしがその証拠」


た、確かにそれは強烈そう…って、いや待て待て待って。


「オバ…お姉さま、もしかしてさっきと同じでからかってます?」
「さあ、どうかしら。…時に貴女、誰か入れ替わってみたいと思う方はいて?」
「……」


信じられないと心底思いつつも、アタシの頭にはすぐにただひとりだけが思い浮かんだ。


……バンビ……。


「その方にこれを飲ませて、体の一部を繋ぎ、一晩一緒に過ごすのです。次に目覚めた時には貴女はその方に、その方は貴女になっているでしょう。ただし、効果は口にした時から24時間。意識を保てるのは後から薬を口にした方だけだから、お気をつけなさい」
歌うような口調で語られる説明をなんとか記憶して、頭の中で反芻する。


体の一部を繋ぎ、一晩一緒に……って、ひえぇえぇぇえ! 
むむむ、無理でしょ!
なに、じゃあ相手って男限定!? 俺があいつであいつが俺で的な展開なワケ、この話!!
それとも禁断のお花的な!?
駄目、ゼッタイ駄目!
あ、アタシには無理…!


「そ、そんなこと無理です! できるわけないですよ!」
「何故?」
「な、なぜって…」
「一晩くらいなら手を繋いで眠ることぐらい難しくないのではなくて?」
「て、手…?」
ぽかんとして聞き返すと、オバさまはアタシに白い目を向ける。
「カレン。貴女今乙女にあるまじきことを考えたのではなくて?」
「い、いや、そんな! ないですよ、ありません、私ほら、ね、寝相が悪いから!」
「……そう?」
疑い深そうな表情をしながらも、オバさまは先を続ける。
「使い方は貴女に任せます。後は好きなようになさい」
「あの…どちらにしろ飲むんですよね。人体に害があったりとかは…」
「大丈夫よ。わたくしが何度も飲んでいますからね。安全性は保証します。でも、そうね」
「?」
「もしかしたら、王子の救いが必要になるかもしれません」
「…王子?」
「あるいは、乙女の純潔か…クスッ。後は使ってみてのお楽しみ。それでは、わたくしそろそろおいとまいたします」
「あ、はい…、えっと、何のお構いもしませんで…」


よく考えたら、お茶も出してない、アタシ。


「よくってよ。親戚同士なのですから、遠慮は無用です」
そう言ってオバさまは優雅に立ち上がった。
「あの、オバさま」
「なんです?」
「どうして私にこれを?」
「……貴女もそろそろ一皮剥ける時期だと思ったからです。本来なら自分の力だけでそうなるべきなのでしょうけれども…。わたくしも身内には甘い、と言うことかしら? 後は、そうね…」
「?」
「貴女を見ていると、何とはなしにベラドンナを思い出すの。あの子と貴女は本質が似ている…。わたくしはいつだってまことの乙女の味方」


ベラドンナ…あの子ってことは、誰か知り合いの女性のこと?


そう考えながら、オバさまを玄関先まで送る。
きちんと揃えられたブーツが置かれていて、これに気づかなかったなんてよっぽど疲れてたんだな、と改めて自覚した。


「そうそう、大事なことをふたつほど忘れていました」
「なんです?」
「宇賀神みよ」
「?!」


突然出たもうひとりの親友の名前に、アタシはビックリした。


「世の中には知らない方が良いこともあるのです。つまらない好奇心が己を滅ぼすこともある、とお伝えなさい」


そう言って微笑む顔から漂う冷気に、背筋が震える。


ミヨ~! あんた一体何に探りを? ま、まさか…。
ぜ、絶対止めさせなきゃ! あんの、命知らず…!


「そして最後にもうひとつ」
「は、はいぃ!」
「今度また『オバさま』って呼んだら、姫子、お仕置きしちゃうぞ?」


そう言って音がしそうなほど大きなウィンク。
ヤバーーい!
ア、アタシそう言えばさっき、ついうっかり…!


硬直するアタシの手に、姫子オバさまは鍵を握らせると、チャオ! と挨拶して玄関のドアから出ていった。


「……」


オバさまの姿が消えて、どっと疲れるかと思いきや、逆に気分が高揚して疲れを忘れていることに気がつく。
なんか…嵐みたいなのが急に来て、疲労が相殺された感じ?


やれやれと思いながら、アタシは居間に戻る。
テーブルの上にはさっきの瓶が鎮座していた。


「……」


入れ替わる? ホントに?
だとしたら、1日でもいい。バンビになってみたい。


アタシはもう殆ど信じかけている。
あの人の存在を許すなら、それくらいのことは当然あり得ると、そう思っている。




アタシはその瓶を手に取ると、強く握りしめた。
それこそ、そう、粉々に割らんばかりに。



to be continued…
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